7月に始まったローゼンメイデンも、いよいよラスト3話。
最後まで、しっかりと見ていこうと思う。
さて、冒頭でいきなり、先生にパワーアップした金糸雀がジュンを呼ぶために退場し、少し場が寂しくなったところで、提供の裏でほっぺをつねられる翠星石がどうにも変態っぽくて笑ってしまったわけであるが、ストーリーはいたってシリアス。
しかし、ドール達が立っている中、翠星石だけが寝ているシーンはちょっとシュールだった。
ジュン自身の問題が片付き、とりあえず全員が合流を果たしたものの、蒼星石と翠星石のちからを合わせなければ時計は動かない。
そのため、まずは双子が両方共立って動いている状態にするため、水銀燈から自分のローザミスティカを取り戻す蒼星石。
蒼星石と水銀燈の間で舌戦が繰り広げられる中、ジュンが横槍を入れるも、水銀燈に一蹴される。戦うために生まれた存在であるとは、なんとも悲しい存在のドール達。しかし、今は争っている場合ではない。なんとかこの場から脱出せねばならないのだ。
この交渉、明らかに蒼星石が不利であるように見える。蒼星石は、交渉のカードを持っていないのだ。水銀燈に負けを認める、などというのは、それこそ口約束であって、何の保証もできるものではない。それでも水銀燈が信じたのは、元の世界へと帰るためという現実的な目的だけでなく、蒼星石の愚直なまでの誠実さを知っていたからだと思う。こうして、お互いのメンタリティというか、個性みたいなものを分かり合ってるあたり、普通の人間の関係と変わらない。そう思うと、水銀燈が語った『ローゼンメイデンの存在価値』が、あまりにも悲しいものに見えてくる。
無事にローザミスティカを取り返した蒼星石は、しばし翠星石と戯れる。双子の関係性が良く示され、どちらも可愛らしく描かれたシーンであるが、森永理科さんが演じる蒼星石と、桑谷夏子さんが演じる翠星石、と考えれば、二人の再開は、実に9年ぶり。今回の話は、見ている間にずいぶんと前のアニメのことを思い出すが、このシーンがキッカケとなっている。制作している側の意図とはまったくもって合っていないだろうが、それでも、感慨深くなるシーンだった。
水銀燈にも、ジュンにも、わざわざお礼代わりに妙な悪態をつくところが、翠星石のすごいところである。さすがツンデレの代名詞。デレても刺々しい!「べっ!」が可愛かった。
ドール達がそんなことになっている一方、ジュンはラプラスの魔と遭遇する。
どうにも立場の分からない不思議なウサギであるが、原作未読の人は、いきなりストーリーに絡みだして驚くのではなかろうか。
ともあれ、謎のウサギとともに森の中を進み、谷底に真紅のボディを発見するジュン。ひきこもりが外に出たと思えば、樹海……たしかに悲惨な話で、笑ってしまった。
金糸雀が帰ってくるも、さすがに谷底に降りるのは厳しい。肝心なときには役に立たない、今回も期待を裏切らないフライング乙女は、谷底に光を見つける。
そして、今回の見せ場となるシーン。
ついに揃った双子が、ジュンの命令を受け、時計を動かす。
ジュンの命令は、「もとの舞台を」である。「新しい世界」なんてことを言ってたかつてとは全く違う。かといって、「もとの世界」なんていうだいそれたことも言わない。あくまで、自分の周りの現実に目を向ける、成長の証だと思った。
このシーン、背後が時計になっていて、原作の印象的なシーンをより強い印象にしていて、とても良かった。ただ、植物を育てるときの、背景がカラフルなのはちょっとどうかと思う。
ここは、少し理屈とかがわからないのだが、世界樹の枝をその場に出現させることにより、世界の中に流れる生命=時間を時計に与えることにより、時計を動かした、というような抽象的な話であろうか。そして、抽象的な世界、すなわち植物を育てることが如雨露の役割であり、育った植物から生え、時計に絡まった蔦、すなわち物理的な障害を取り除くのが鋏の役割なのだと思うことにした。そういうわけで、最後の仕上げで時計へと乗り込む蒼星石。作業を進めていくなか、雪華綺晶が出現する。
しかし、ボディを持たず、既に力のぶつかり合いという戦いには敗れた雪華綺晶は、己の中の境界線を取り払い、前に進む決意をしたジュンの敵ではない。自分の心のありのままをぶつけ、真の『自分だけのドール』たる蒼星石を抱きしめながら、イバラを突破する。この時、ジュンはついに、真の意味で己の中のしがらみを断ち切ったのだろう。
そして、そのしがらみこそが自分自身の存在を世界に繋ぎ止める糸であったのが、雪華綺晶である。肉体も、存在の糸をも失った雪華綺晶は、断末魔をあげながら四散し、滅んでしまう。
一方、金糸雀とジュンが見つけた谷底の光は、ベリーベルと雛苺のローザミスティカであった。ずっとこの場所で、真紅のボディを守っていた雛苺。姉妹の絆は、その命が失われた程度で断ち切れるものではない。ひょっとしたら、雪華綺晶をこの世に繋ぎ止めるジュンの思いが簡単に断ち切られてしまうようなものであったのと、対比になっているのかもしれない。
世界からの脱出、真紅のボディの発見。
成すべきことが、両方共成されたものの、タイムリミットは迫っていた。
時間が動き始めるとともに崩れる真紅と、蒼星石からローザミスティカを奪い返そうとする水銀燈。
一瞬の喜びもつかの間、ローゼンメイデンの宿命は、どこまでも絶望的に動き続ける……というところで次回に続く。
冒頭、「あったことをあったことに、なかったことをなかったことに」「元の世界を、もとにもどす」みたいに、言葉遊びみたいな言い回しが出てきた。
ローゼンメイデンは、モチーフこそファンタジックで幻想的なので、こういう言い回しがたくさん出てくる印象があるが、意外と珍しいと思う。
特に、金糸雀なんかは、語尾にかしらとつくものの、余計な言葉を付け加えたりする印象が無いので、ちょっと新鮮に思った。
今回の絵本は、5個目の人形が開かれたが、おじいちゃんが死んでしまった。
何やら願いの叶え方が歪んだものになってきて、少し先行きが不安な感じである。
今回は、失われたドール達の活躍が目覚ましかった。
前回復活を遂げた蒼星石は、主人公たるジュンのドールとして、大活躍である。今回の主役は、間違いなく蒼星石であろう。
先にも述べた通り、蒼星石と翠星石は、アニメにのみ着目すれば、実に9年ぶりである。自分としては、この二人の声は、森永さんと桑谷さんしかありえないとおもっている。なんというか、すごくハマっていると思うのだ。だから、この二人が演じる彼女たちが対面するシーンは、あまりにも長い時間を経た再開のような気がして、本当に感慨深かった。
雛苺も、同じである。今回のアニメでは、原作に則っている以上仕方ないことではあるが、野川さくらさんの声があまり聞けないのが残念である。野川さんは、第一話でも演技力を魅せつけてくれたが、前回のアニメの時から、雛苺の演技はすばらしかった。
今回は、声は無かったものの、雛苺の静かな活躍が描かれた。
高校生の頃、トロイメントのラストシーンで、蒼星石と雛苺のローザミスティカを手に時の狭間を浮遊するラプラスと雪華綺晶を見て、いつか続編が作られると思っていた。
雪華綺晶の暗躍が、彼女ら二人の復活が、いつか描かれると思ったのだ。
その直ぐ後に、シャナがオリジナル展開に入った時も。翌週になり、びんちょうタンが始まっても、ずっとそう思っていたのに、いつか忘れてしまっていた。忘れるくらい、あまりにも色んなことがあった。
なんとなく、あの時のことを思い出した、今週のローゼンメイデンであった。
今日はやっぱり、このシーン。
「命令を」のシーンである。
個人的に、今日一番のハイライト。
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