2013年9月10日火曜日

ローゼンメイデン 第十話

第十話。ついに二桁である。

今回は、ジュンが蒼星石と契約するお話。すなわち、蒼星石が復活する話だ。
蒼星石のボディを守るために乱入するも、結果的に雪華綺晶に味方する形となった翠星石。
どうしようもない膠着状態を打破するため、ジュンは真紅との契約を結ぼうとするも、雪華綺晶の妨害により叶わない。それどころか、雪華綺晶は自分の指輪を取り出し、自分との契約を結ばせようとする。このくちづけのシーンは、実に妖しく、不気味である。
一方、翠星石は、蒼星石とジュンを契約させようとするも、水銀燈は先にジュンと交わした約束を持ち出す。そして、真紅は、仮のボディのタイムリミットが迫る。
雪華綺晶が敵であることは共通していても、ローゼンメイデンは決して一枚岩ではないのだ。契約するドールを選ぶことになったジュンは、美少女たちが自分を取り合っているという夢の様な状況なのに、まったくもって羨ましくない。
メイメイとスイドリーム、人工精霊どうしという珍しい戦いが繰り広げられたあと、イバラが切れて地面におちた拍子に、ジュンは蒼星石の指輪にくちづけをしてしまう。
そして、あまりにも役者が揃い過ぎたこの状況は、お父様ことローゼンの導きによるものであることが判明すると同時に、蒼星石のボディが、ついに雪華綺晶から分離する。翠星石は、自分のローザミスティカを、妹である蒼星石に捧げる。このシーン、翠星石は一度だけ水銀燈に蒼星石のローザミスティカを返すよう説得するも、成らぬとわかれば何のためらいもなく自分の命を捧げるという、彼女たちの特別な絆が描かれたものとなっている。
そして、ローザミスティカを捧げたその瞬間、世界に異変が起こり、時計が全てを連れ去ってしまう。

Bパートは、ドールとジュンが引き離される。
ジュンの方は中学生ジュンと金糸雀の居るところへ飛ばされる。過去と未来、まいた世界と巻かなかった世界、絶対に交わることのない二人でありながら、同一人物というなんとも奇妙な組み合わせの対話が始まる。
そして、ジュンは過去の自分に対して、ひどく陰鬱な現状を吐露するが、がっかりするかつての自分を見て、気づく。自分が語っているのはただのいいわけであり、自分で勝手に選択肢を摘み取っているにすぎない。自分を否定しているのは、他でもない自分自身であるということに。
進むべき道に気づいたとき、第零世界から脱出がかなったジュン。
一方で、ドールたちは、復活した蒼星石に対する困惑が広がる。と言っても、主に困惑しているのは水銀燈のみ。かつて命を奪ったはずの蒼星石が、確かにその場に居るという事実に対する混乱である。ボディを奪われた雪華綺晶の方はと言うと、実体を持たぬ姿を恥じて何処かへ消える。
そして、金糸雀の活躍によってジュンはドールズの元へたどりつき、金糸雀が指す方向に大時計を見るところで、次回に続く。

今回は、蒼星石の復活と、ジュンが現状を打破したことが印象的な話であったが、金糸雀の活躍も、大きなみどころである。今回は、見どころがかなり多い話だ。
二人のジュンが話している時にうたた寝をしてしまったり、細かい動きが可愛らしいのももちろんだが、ジュンの手にまとわりつく光に気づいたり、格好いい活躍もした。平行世界への扉に囲まれながら、ローゼンメイデンとは何たるかを語るところとか、頭が良さそうでいいかんじだったのに、傘が飛んでいったらそちらを気にしているところが可笑しくて、どうにもシリアスにはなりきれない感じ。
ヴァイオリンを奏でることで、雪華綺晶が創りだした水晶の結界を破壊するシーンは、周りが金色になって、まさに金糸雀の独壇場。こういうシーンは、色がつくことによってより印象的なシーンになるし、何より音というものがメインに据えられるわけだから、漫画で見るよりも、アニメという表現のほうが適しているシーンだと思う。周りが金色になるところとか、いかにもそこが金糸雀のフィールドになったことが現れていて、凄く良かった。
初登場以来、謎の存在感を放っていた「かしら」という語尾にツッコミが入ったことにも注目である!真っ赤になったり、へたりこんだり、なにかと愛らしい金糸雀である。
それにしても、乙女番長とは……一体なにを思ってこんな肩書を名乗りだしたのだろう(笑)

翠星石の策により、ついに復活した蒼星石。
翠星石は、なんの躊躇いもなく蒼星石にローザミスティカを捧げた。
真紅と水銀燈の間にある、なんとも複雑な関係とは違う。真紅と雛苺の間にある関係とも違う。
互いが、自分の命よりも大切な特別な存在であるという、双子ドールの特別な絆。
原作を読んでいれば周知のことであるし、アニメでも既に語られているものだが、これを限られた時間の中できっちりと描いているところに好感が持てる。
そして、復活後もナチュラルにセクシーな言い回しをする蒼星石……見た目に似合わぬたらしで面白い(笑)

ジュンは、ついに光明を見つける。
過去の自分との対話、というのは、とても大切なことだと思う。
何かに失敗した時、人はどうしても過去の自分に対する言い訳を考える。どうせ最初からダメだったのに、なぜあんなことをしようと思ったのだ、とか。すっぱいぶどうなんてのも、手に入れられなかった今の自分が、手に入れようとしている過去の自分を否定する行為を表すたとえだと思う。何れにしても、過去に対して言い訳をしながら、今の自分をなんとか正当化し、なぐさめようとしているのだ。
ジュンは、過去の自分が「すごい」なんて純粋な気持ちで言ってるいろいろなことを、頑なに「大したこと無い」とか言って否定してしまっているのだ。だれも、彼に対して否定的なことは言っていない。かつての自分は賞賛を送り、その場に居るドールは寝ている。そんなことを言っているのは、彼以外に誰もいない。
ジュンは、文字通り、過去の自分と対話することにより、そういうことに気づいたんじゃないかと思う。なにをどうしても、過去は変えられない。変えられるのは未来だけ。かつて真紅が語ったその言葉の、本当の意味がわかったのだ。
過去にどんなことがあって、現在がどのような暗い状況にあったとしても、未来への希望だけは捨ててはいけない。これは、どん底の中でも残された最後の光なのだ。これを捨てた時点で、人間は死ぬしかなくなる。逆に言うと、死に至っていない時点で、希望を捨ててなんかいない。なんとか自己肯定しようと、過去に対する言い訳をしているにすぎないのだ。
残念ながら、自分は今このような状況に陥っている。
もう少し、もう少しだけ暗い気分に浸るとして、もう一度、この会話を見返してみようと思う。

次回予告のテーマは『図星』
変なお店というワードが出てきたり、珍しく店長が主導権を握ったり、斉藤さんが謎の本性を表したり、どうやらこちらも佳境へと突入したようである。


 
いつも、事あるごとに蒼星石を描いているものとしては、今回は蒼星石の復活を記念して彼女を描くべきだと思ったが、やはりやめることにした。自分の人生における大きな出来事が、ひとつあったためだ。そちらについて、蒼星石を描くことにした。
だから、今回は、ジュンである。
今の、そう、まさに今日の私の心に響く会話をしてくれた、この二人(一人?)を描いた。
それにしても、男性キャラを描くのは難しい。
 
2020年のオリンピック開催都市が東京に決まった。
AKIRAが予言をしていたみたいでびっくりだけれど、あんな荒廃した世界とは真逆の、明るい日本が出来たらいいな、と思う。

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